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●「No. 6 #5」あさのあつこ [読書レポート]

「No. 6 #5」あさのあつこ
矯正施設潜入を果たした紫苑は、地獄を見た


NO.6〔ナンバーシックス〕#5 (講談社文庫)

NO.6〔ナンバーシックス〕#5 (講談社文庫)




読了日:2014.3.5
分 類:中編
ページ:213P
価 格:476円
発行日:2006年9月講談社、2009年8月発行
出版社:講談社(講談社文庫)
評 定:★★★+


●作品データ●
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主人公 : 紫苑
語り口 : 3人称
ジャンル: 近未来SFライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 起承転結の「承」
結 末 : 次巻に続く
カバーデザイン: 岩郷重力+WONDER WORKZ。
デザイン : 菊地 信義
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【100字紹介】
拉致された幼馴染の沙布を助けに、
矯正施設への潜入を果たした紫苑とネズミは、
そこで「地獄」を見ることに。
常連の少女・莉莉の一家の事情に胸を痛める火藍。
紫苑から預かった赤ん坊を持て余すイヌカシ…物語は進む



近未来SF第5巻。
前巻から動き始めた計画は成功し、
ついに矯正施設に潜入した紫苑とネズミ。
というか、これは潜入…?
運よく、何とか、生き延びた、というような。
しかしそこは地獄。
人が人に対し、ここまで非情になれるのか、という描写の数々。
何度も心が折れそうになりながらも、
何とか進んでいく紫苑。
そんな紫苑をさりげなくバックアップするネズミの
精神力の強さが尋常ではありません。
更に、これ、一体どうしてそんなところに
繋がっているの?というところまで
入り込んでいるのですが。
ど、どういうこと?

一方で、No.6内部の話もあります。
紫苑の母・火藍が主人公。
No.6の不審さを何度も感じてきた火藍。
ただでさえ息子が心配でしょうに。
彼女の立場は、大変につらいものです。
火藍は、本当に強い人ですね。
そして彼女のマフィンをこよなく愛する少女・莉莉も。
実際に行動する楊眠も強いのですが、
心の強さとしては実は、莉莉が一番なのかも、
と思うくらいです。

更にNo.6の外。西ブロックの主人公はイヌカシ。
犬たちとともに、破壊された市場で、
「火事場泥棒」に勤しむ、割り切ったというか、
生に貪欲というか、すれてしまっているイヌカシ。
そのイヌカシが、何と紫苑から託された赤ん坊を
受け取ってしまいます。
要らない、と思ったはずのイヌカシですが、
結局連れ帰って、戸惑いつつも、
「シオン」という名づけまでしてしまう始末。
イヌカシがこれからどう成長していくのかを
期待してしまうエピソードでした。


さて、まだ「矯正施設」のことは何も分かっていません。
潜入は成功したはずなのに、ちっとも近付かないのです。
また次巻へ持ち越しですね。
沙布は一体、どうなってしまったのか…!
気になるところです。
それにしても彼女も一途ですよね。
何だか切ないです。


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文章・描写 :★★★★
展開・結末 :★★★
キャラクタ :★★★★
独 自 性 :★★★★
読 後 感 :★★★
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菜の花の一押しキャラ…ネズミ

「言葉を免罪符にするな。もっと、尊べ」(ネズミ)

●「スカル・ブレーカ」森 博嗣 [読書レポート]

「スカル・ブレーカ The Skull Breaker」森 博嗣
城下の問題と権力争いに巻き込まれたが…。


スカル・ブレーカ - The Skull Breaker

スカル・ブレーカ - The Skull Breaker



読了日:2014.3.5
分 類:長編
ページ:328P
価 格:1800円
発行日:2013年4月発行
出版社:中央公論新社
評 定:★★★★+


●作品データ●
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主人公 : ゼン(自分)
語り口 : 1人称的
ジャンル: 小説一般
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 静か、淡々と、時代物
ブックデザイン : 鈴木成一デザイン室
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【100字紹介】
腕は立つが、世間知らずで純粋な侍・ゼンは、
都を目指して旅を続けていた。
通りかかった城下の喧嘩に巻き込まれ、お城へいくことに。
御前試合、城下の宿屋襲撃事件、そして謎の面会者と襲撃。
ゼンの出自が明らかに?



「ヴォイド・シェイパ」「ブラッド・スクーパ」の続編の時代物です。
都を目指して旅を続けるゼンノスケ、城下でトラブルに巻き込まれます。
知り合った「ヤナギ」とともに、
「ドーマ」によってお城に連れて行かれることに。
御前試合ののち、ようやく城下に戻るものの、
今度は宿屋襲撃事件に巻き込まれ…。
更には城主の姉とされている実力者「クク様」からの伝言で、
向かった先の瑞香院という寺で人と面会した後、
襲撃事件に巻き込まれ…。

もう、とにかく巻き込まれすぎです、ゼンノスケ。
嵐を呼ぶ男でしょうか?

しかも彼が関わることで、人死にが出てしまったような…。
直接の原因ではないかもしれませんが、遠因には違いありません。
何て厄介な。

全体に静かな雰囲気は継承されていますが、
前作よりは、賑やかな土地柄か、人の出入りが激しく、
また主人公の胸中も外界からの影響を徐々に受けて、
揺れ動くようにも見受けられました。
山奥から物理的に出てきた主人公・ゼンノスケも、
ようやく身体だけでなく心の方も
人里に出てきつつあるのかもしれません。


それにしても。
最後にゼンノスケの出自が…!
へー、という。
今後の伏線というわけですね。


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文章・描写 :★★★★+
展開・結末 :★★★★+
キャラクタ :★★★★+
独 自 性 :★★★★★
読 後 感 :★★★+
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菜の花の一押しキャラ…ヤナギ

「まさか、気づかれぬとは…、誰も思っておりません」(ナナシ)

●「哲学図鑑」大城信也[著]、小川仁志[監修] [読書レポート]

現代人の悩みをすっきり解消する 哲学図鑑 恋愛ビジネスから人生観まで役立つ」大城信也[著]、小川仁志[監修]古今34名の哲学者とその思想をとりまとめ




読了日:2014.2.11
分 類:一般書
ページ:159P
価 格:1500円
発行日:2013年9月発行
出版社:誠文堂新光社
評 定:★★★★


●作品データ●
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テーマ : 哲学者とその思想
語り口 : 教科書調
ジャンル: 一般書
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 簡潔
イラスト: camiyama emi
装丁・デザイン: 宇都宮 三鈴
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【100字紹介】
ピュタゴラス、ソクラテスから現在も存命のユルゲン・ハーバーマスまで、
34人の哲学者を年代順に並べ、人物紹介&似顔絵1P
+簡潔にまとめられた思想2P+まとめ1Pの各4P構成で
次々と紹介する、哲学の図鑑。



哲学、何となく好きです。
簡単そうな哲学紹介本があると、思わず手に取るくらいには。

というわけで、図書館で見かけて
「お」と思わず手に取りました。


読後の感想としては、「よくまとまった本」ですね。
上述の100字紹介の通りの構成なのですが、
本文は1人あたり、僅か2ページなわけです。
しかも、そのうちの3分の1くらいは、
その人物や思想などを導入する部分。
実際の本人の思想は残り3分の2。
でも、この導入部分が上手い。
これのお蔭で、すーっと、
しかも興味を惹かれたままで入っていけるのです。
読みやすいですね。
思想部分も簡潔によくまとまっていると思います。
まあ…ここまで簡潔だと、ちょっと不安になりますけれど。
あれ、こんな感じでいいの?まだ言ってないこと、
当然いっぱいあるよね?とも思いますし。
その意味で、この本は導入本、なのですね。
ここでその人物や思想、またはその時代に興味を持ち、
次のステップとなる本を探しに行くための。

人物は年代順に配置されており、哲学の流れもほんのりと分かります。
確かに、図鑑的に、他の哲学の本を読むときに
「あれ、あの人はどうだっけ?」と手に取りたいかも。

導入であり、また戻ってきて確認の出来る本。
簡易にすぎると言われるかもしれませんが、
分野外の人にとっては、面白いと思います。

それにしても、実に色々なことを考える人がいたものですね。
人類は、何百年にも渡って、こつこつと、
思想を積み重ねていったのだなーと思います。
いや、人類の一部が?
それを今、こんな簡単にぱらぱらっと読ませて頂いて、
ありがたいやら申し訳ないやら。
人生を考える一助にしたいと思います、はい。


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文章・展開 :★★★★
簡 潔 性 :★★★★
学 術 性 :★★★★
独 自 性 :★★★★
読 後 感 :★★★★
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●「レンタルマギカ 最後の魔法使いたち」三田 誠 [読書レポート]

「レンタルマギカ 最後の魔法使いたち」三田
大魔術決闘もついに決着し大団円へ…完結編


レンタルマギカ  最後の魔法使いたち (角川スニーカー文庫)

レンタルマギカ 最後の魔法使いたち (角川スニーカー文庫)



読了日:2014.02.09
分 類:ライトノベル
ページ:422P
価 格:629円
発行日:2012年8月発行
出版社:角川書店(スニーカー文庫)
評 定:★★★


●作品データ●
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主人公:伊庭いつきほか
語り口:3人称
ジャンル:ライトノベル
対 象:ヤングアダルト向け
雰囲気:オカルト
結 末:大団円
イラスト:pako
デザイン:中デザイン事務所
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【100字紹介】
<螺旋なる蛇>と<協会>の切り札同士の激突。
世界の認識を創り変える惑星魔術の発動。
第三団たちの強大な魔力のせめぎあい。
そんな中、いつきは、司は、アディリシアは、穂波は、フィンは…!
シリーズ本編最終巻。



オカルト系ライトノベル作品の第22巻。
本編最終巻とのこと。

引き続き、2大組織と<アストラル>の三つ巴戦、
真っ只中からのスタート。
で、何だかんだあって、何とか終わります。
…すみません、まとめすぎました。
いや、でも何というか…、
結構分厚くて、色々動きもあったと思うのですが…、
間が長いというか、全体的にテンポはあまりよくないかも。
いや、でもそういうちょっとだけ「もったいぶった感じ」が、
神秘的な雰囲気を醸し出している…のかも。

それにしても結末に驚き。
いえ、全体としては何の問題もないのですが、
表紙でいつきが手をつないでいる相手が、
確定しちゃうとは思いませんでした。
いや、していないのかもしれませんが、
していますよね?これは。していますよね?
本人にどれくらいの自覚があるかは知りませんが。


まだこのあとに、短編集が出るようです。
そこまで読んだら、このシリーズともお別れですね。
最初はアニメで知ったこの作品ですが、
そのあともなかなか長い道のりでした。もう一息。


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文章・描写 :★★
展開・結末 :★★★
キャラクタ :★★★
独 自 性 :★★★
読 後 感 :★★★
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菜の花の一押しキャラ…伊庭 司

「僕たちの世界は、いつだって僕らが考えるよりほんの少しだけ
 不思議が多いって、そう思ってます」     (伊庭 いつき)

●「篁破幻草子 めぐる時、夢幻の如く」結城 光流 [読書レポート]

篁破幻草子 めぐる時、夢幻の如く」結城 光流
小野篁&橘融のオカルトファンタジー最終巻




読了日:2014.02.08
分 類:ライトノベル
ページ:286P
価 格:514円
発行日:2007年6月発行
出版社:角川ビーンズ文庫
評 定:★★


●作品データ●
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主人公 : 小野 篁(橘 融)
語り口 : 3人称
ジャンル: ライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 歴史オカルト
結 末 : 解決、完結
イラスト: 四位広猫
デザイン: BELL'S
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【100字紹介】
ときは平安のはじめ。人の身でありつつ夜は冥府の官吏として、
都にはびこる鬼を狩る小野篁。彼の持つ凶星・破軍の魂は不完全であり、
そのために悪鬼・朱焔に執拗に狙われ、
ついに闇に堕ちることに…!シリーズ完結編



シリーズ第5巻、最終巻です。

ごくごく久し振りに読みました。
4巻を読んだのが2008年の夏です。実に5年半振り。
当然ながら…覚えてません!(>_<)
が、無謀にもそのまま読み進めました。

結果。

話が分からない…。
ひたすら置いてけぼり…。
そして置いてけぼりにされながら、
最後まで読むことになってしまいました。

初っ端から楓が多分、死んでいて(?)、
篁は闇に堕ちかけていて、生まれ変わる前だか、
過去の宿命が出てきて、主人公がぐるぐるしている間に、
周りでは色々悲劇と惨劇がおきまくり、
過去の思い出も次々飛び出し…、という感じ。

結論から言えば、置いてけぼりで
感情移入ゼロのまま読み進めるという、
その読み方が悪かったのか、どうも微妙でした。
何だか一昔前の少女マンガみたいです。
悲劇の大バーゲンセール
内容としては結構シビアで、どんどん犠牲が積み重なっていく、
絶望的なエピソードなのに、お芝居がかっているというか、妙に遠いというか。
でもすみません、きっと感情移入できなかった、
覚めた目の読者が悪いです(>_<)。

なお、巻末には「橘少将、鬼の「腕」と闘うの事」と
「終わりなき、それは」の短編2編が収録されています。
「終わりなき~」は、昌浩&もっくんも出張出演です。


しかしこれだけのことがありつつ、
最終的に主人公だけが取り残されるのは切ないですね。
他の北斗の人たちの魂は一体、どこへ…?


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文章・描写 :★★
展開・結末 :★★
キャラクタ :★★★
独 自 性 :★★★
読 後 感 :★★★
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菜の花の一押しキャラ…橘 融

「俺くらい知っていてやらないと、働き損だよなぁ」(橘 融)

●「伯爵と妖精 白い丘に赤い月満ちて」谷 瑞恵

「伯爵と妖精 白い丘に赤い月満ちて」谷 瑞恵
妖精と謀略とドキドキの英国風ファンタジー




読了日:2014.1.20
分 類:ライトノベル
ページ:298P
価 格:550円
発行日:2013年4月発行
出版社:集英社(コバルト文庫)
評 定:★★★★


●作品データ●
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主人公:リディア・アシェンバート
    エドガー・アシェンバート
語り口:3人称
ジャンル:英国風ファンタジー
対 象:ヤングアダルト向け
雰囲気:少女漫画風
結 末:ハッピーエンド
イラスト:高星 麻子
装 丁:織田 弥生
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【100字紹介】
英国、ヴィクトリア朝時代が舞台のファンタジー・ライトノベル第31巻。
自分の運命を知り、姿を消すアルヴィン。その行方を案じつつ、
リディアとエドガーは最終決戦の準備を進める…ついに迎えた彼らの戦いの結末。



英国、ヴィクトリア朝時代が舞台のファンタジー・ライトノベル。
32冊目にして第31巻、本編最終巻です。完結です。

自分が生まれれれば母が死ぬ、
プリンス打倒こそ使命だと信じていたのにそれは父殺しに
繋がっていた…、過酷な宿命を知って姿を消したアルヴィン。
最終決戦の鍵を握る「ファイアアゲート」を求めて、
伝説のセルキーを知るであろう老セルキーを訪ねるアーミンたち。
着々と調査を進めるカールトン教授や「朱い月」のメンバーたち。
多くの協力を得ながら、ついにリディアとエドガーの最後の戦いが始まります。
そして、終わります。

ここまでの道のりを思うと、ぎゅっと1冊に詰め込みすぎでは!?
というくらいの密度。ですが、まあそこはスピード感を出すために、
ということでよろしいのではないでしょうか。
あんまり引き伸ばされても、疲れますしね。


それにしても、これで本当に終わりなのですね。
もっと読みたい、もっと浸っていたい…と思いつつ、
そろそろ彼らの苦労も終わらせてあげたい、とも思います。
そして、まだ生まれていないにも関わらず、
すっかり親の顔になってしまったリディア&エドガーを眺めつつ、
時の流れに思いを馳せます。
それほどの時間は経っていないとはいいつつ、初期からは激変ですね。
リディアもエドガーもレイヴンもみんなみんな。
そしてアーミン…。まさかのアーミンでした。
ケルピーとの関係がとても興味深いものでしたのに。
それに、レイヴンとの関係も。
レイヴンと言えば、まさかのロンドン塔での繋がりでしたが、
あれは最初から構想されていたのでしょうか…。
うまく行き過ぎてびっくりですね。
そしてレイヴン&ケリーもいいですね。いいですよ!
まだ短編集があるらしいです。
いやー…、楽しみです。


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文章・描写 :★★★★
展開・結末 :★★★★
キャラクタ :★★★★
独 自 性 :★★★★
読 後 感 :★★★★
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菜の花の一押しキャラ…エドガー・アシェンバート

「妖精は、淋しくならないものね。魂しかないからなのかしら。
体を得てこの世に生まれたとたん、心はいろんな思いを知るのかもしれないわね」(リディア)

●「子どもに「ホームレス」をどう伝えるか」生田武志、北村年子 [読書レポート]

子どもに「ホームレス」をどう伝えるか いじめ・襲撃をなくすために」藤田和男監修ホームレス襲撃事件といじめには繋がりが…


子どもに「ホームレス」をどう伝えるか

子どもに「ホームレス」をどう伝えるか



読了日:2014.1.20
分 類:一般書
ページ:213P
価 格:1200円
発行日:2013年7月発行
出版社:太郎次郎社エディタス
評 定:★★


●作品データ●
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テーマ :ホームレス襲撃・いじめ問題の初等教育
語り口 :講演(口述)
ジャンル:一般書
対 象 :初等教育者向け
雰囲気 :比較的、一面的
装丁・本文デザイン :箕浦 卓
挿絵・漫画 :ありむら潜
---------------

【100字紹介】
現状をどのように子どもに教育し、
蔑視からくる子どもによるホームレス襲撃を止めるか。
ホームレス襲撃の心理に潜む「いじめ」についても考察。
思い込みからの差別や不安や不満が、弱いものへ噴出する現状を考える。



「ホームレス問題」に興味をひかれて、この本を手に取りました。
しかし、看板に偽りなし。タイトル通りです。
「ホームレス」問題に取り組んだり、解決策を考えたりは一切せず、
「現状をどのように子どもに教育し、蔑視からくる子どもによる
ホームレス襲撃を止めるか」に集中する本でした。
勝手に、ホームレス問題を考えるのかな、と思って読み始めたので、
拍子抜けしてしまったのですが、もう一度タイトルを見て、
勝手に誤解したのは自分だ、と反省した次第。


本書は大きく分けて、4パートから成っています。
1つ目は「高校生へ」という講演。
2つ目は「教職員へ」という講演。
3つ目は「中学生へ」という講演。
これに、ホームレス問題の授業づくりのための資料がくっついて4パート。

基本的にはどれも同じようなもの。
特に2つめと3つめは同じ人の講演なので、
語り方が異なるだけで、内容は重複という感じ。
どちらかというと、前半の生田氏は「構造」などの社会的な話、
後半の北村氏は個人の情緒的・心理的な話でした。

ホームレスは自ら望んでなるものではなく、やむにやまれぬ事情…、
しかも個人的ではなく、社会構造的な問題によりはじき出された人たちが、
段階を踏んで落ち込んでいくもの。また、一度落ちると、
階段の高さがあまりにも高いため、戻るのは困難であること。
皆がタブー視し、実情を知ることなく思い込みによる蔑視により
避けるような行動をとるために子どもにも蔑視が刷り込まれ、
「ホームレス襲撃」が絶えないこと。
また、「頑張らない人々の駆除」というような言い分で、
思い込みからの差別により、犯人はホームレスの人権を認めず、
重大な結果を引き起こしても反省が見られない場合も多いこと。
普段の生活で不安・不満を抱えた「心のホームレス」の暴走が、
いじめやホームレス襲撃に繋がっていること。
無関心こそが最大の暴力。
後半にいくほど、ホームレス問題は無関係になり、いじめ問題の話へ。


全体に、「なるほど」という点は多かったです。
ただ、特に後半は押し付けがましさが気になりました。
非常に見方が一面的で、ここで出てくる授業は「誘導」以外の何者でもない、
というのが、非常に居心地が悪いのです。
ホームレスだって、良い人も悪い人もいることでしょう。
ただ、授業開始前の時点ですでに、
見方が一方的になっている事案に対する教育というのは
こういうものかもしれません。
悪い方一点張りを、ショック療法でも何でも、打破しないといけないわけで。

しかし、もう少しホームレス問題自体にも踏み込んで貰いたかった、
というのが正直なところ。まあ、そこまではこの厚さでは難しいでしょうか。


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文章・展開 :★★
簡 潔 性 :★★★
学 術 性 :★★
独 自 性 :★★★★
読 後 感 :★★
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●「No. 6 #4」あさのあつこ [読書レポート]

「No. 6 #4」あさのあつこ
矯正施設へ潜入する計画を実行開始する紫苑


NO.6[ナンバーシックス]#4 (講談社文庫)

NO.6[ナンバーシックス]#4 (講談社文庫)


読了日:2014.1.12
分 類:中編
ページ:212P
価 格:476円
発行日:2005年8月講談社、2008年8月発行
出版社:講談社(講談社文庫)
評 定:★★★★


●作品データ●
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主人公 : 紫苑
語り口 : 3人称
ジャンル: 近未来SFライトノベル
対 象 : ヤングアダルト向け
雰囲気 : 起承転結の「承」
結 末 : 次巻に続く
カバーデザイン: 岩郷重力+WONDER WORKZ。
デザイン : 菊地 信義
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【100字紹介】
拉致された幼馴染の沙布を助けるため、
矯正施設への潜入計画を実行に移す紫苑。
ネズミたちの協力を得て、No.6の高官から情報を入手し、
「人狩り」に乗じての潜入。
それはとてつもなく暗く、苦しい試練の始まり…



近未来SF第4巻。話はゆっくりじっくり進みます。
矯正施設に連れ去られた幼馴染の沙布を助けるため、
施設内部の状況の情報収集をする紫苑・ネズミ・イヌカシ・力河。
序盤は、No.6高官の富良の尋問に、全体の3分の1以上費やし、
真っ直ぐで、ちょっと甘くて、でもひたむきな紫苑が、
葛藤しつつも、その性質を活かしたままどう頑張ったかが描かれます。
中盤、紫苑とネズミの会話と、突然のネズミの不調、
そして回復と…紫苑の底の見えなさを感じたネズミは紫苑を
「得体が知れない」と戦慄するのです。
一方で、No.6内部でのトップたちの様子と紫苑の母・火藍の周りの様子から、
話は着々と進んでいるのがわかります。
そしてついに始まる「人狩り」。
市場での惨劇と、絶望の護送。
確かに矯正施設に入ることはできましたが、これは一体どうなる!?
…というところまで。


作家さんは怖いです。
ついにやってきた「人狩り」、
こんな恐ろしい状況を淡々と描いてくれるとは。
しかし、この紫苑がまた凄い。
びっくりするくらいの成長です。
目の前の人の運命が分かっていても、
飛び出さない、叫ばない、じっと気持ちを押し殺しつつ、
冷静に計画を遂行していく紫苑。
相変わらずひたむきさ、まっすぐさはそのままなのに、
単なる直情型の「少年誌的主人公キャラ」ではない、
というのをどんどん鮮明にしていってくれます。
何しろネズミですら「得体が知れない」と思うことがあるくらいですし。

そのネズミの方だって、まったく得体は知れていないのですが。
突然、倒れて紫苑のまた別の面を引き出してくれたネズミですが、
倒れたときの状況は謎だらけ。
草原、風、無数の昆虫の翅の唸り、流れてくる歌。
懐かしい声…ネズミの過去に密接に関わっているであろう幻影として、
読者に提示されたわけですが…今巻では提示のみ。
引っ張ってくれます。気になりますね。


ストーリー自体はそれほど大きく動いていないのですが、
それぞれのキャラの心の中の変化は激動、なのかもしれません。

それにしても続きが…気になります。
いや、アニメを見ていたので、ストーリーは知っていますけれどもね!
それでも是非、この著者の文章で、描き方で、読んでみたいと思うのです。
ネタバレしていても、価値が下がらない作家さんだと思います。


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文章・描写 :★★★★
展開・結末 :★★★★
キャラクタ :★★★★
独 自 性 :★★★★
読 後 感 :★★★
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菜の花の一押しキャラ…ネズミ

ネズミ、ぼくは人間でありたい。
ネズミがふっと息を吐いた。
「正気を保て。できるな」
「だいじょうぶだ」
「だよな…あんたならだいじょうぶだろう。余計なことを言った」
                   (地の文、ネズミ、紫苑)

●「若き検死官の肖像」椹野 道流 [読書レポート]

「若き検死官の肖像」椹野 道流
殺人事件の供述は、まさかの被害者から!?


若き検死官の肖像 (f-Clan文庫)

若き検死官の肖像 (f-Clan文庫)



読了日:2014.1.4
分 類:ラノベ
ページ:295P
価 格:590円
発行日:2012年2月発行
出版社:f-Clan文庫(三笠書房)
評 定:★★★★


●作品データ●
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主人公 : サイラス・クレイトン
語り口 : 3人称
ジャンル: ライトノベル
対 象 : 一般向け
雰囲気 : オカルト・ファンタジー
結 末 : 解決
イラストレーション: みやもと
デザイン : SAYAKA HASHIMOTO
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【100字紹介】
晴れて検死官となり、アングレ第二の都市から自治区へ赴任したサイラス。
そこは事件の詮議も弔いもすべてネクロマンサーに託される土地だった…。
サイラスは死人が語る嘘を暴き、検死官の職を認めさせられるのか…?



英国風ミステリアスストーリーの「貴族探偵」シリーズと同じく
「アングレ」を舞台とするファンタジー。
著者の持ち技であるところの、「監察医(検死官)」
「ネクロマンサー」「ミステリ風ファンタジー」の合わせ技です。

アングレ第二の都市である北部の工業都市・ホルシャムに生まれ、
ホルシャムで育った検死官助手、27歳のサイラスが、
検死官に昇格して併合地であるギルドフォード自治区という
片田舎へ修業に出されるところからお話は始まります。
ギルドフォードは独自の風習を保っている土地。
検死などは必要がないという凄いところです。
別に殺人事件がないわけではないのです。
でも、お弔いにはネクロマンサーが出てきて、
「死者の最後の言葉」を語らせてしまう土地柄ですから、
殺人事件の被害者だって、被害者自身が起き上がって
犯人を証言してしまうという、ぶっ飛び設定です。

邪険にされるも、自分の仕事を認めさせようと奮闘する、
直情型で、一本気、得意技は空回りのサイラス。
そんなサイラスをふわっと取り込んでくれた、
先代検死官とも親しかったという薬師のエイステン。
浮世離れしていて、尊大な話し方をするものの、
根はとても可愛らしいところのあるネクロマンサーのヴィンセント。
それぞれが意外にワガママで、、この話をまとめることより
各人の個性を優先してしまうあたりが素敵。
ストーリーのために彼らキャラクターが存在するのではなく、
彼らが動くからストーリーが出来ていく、という基本的なところは
ばっちりおさえられています。さすがにベテラン。
そしてそれぞれに「いや、そんな堂々と、理不尽な!」という
突っ込みどころもあったりするのです。
超人がいないからこその人物描写のリアリティでしょうか。


ラストはうまくまとまっちゃったなあという気はしますが、
ライトノベルですからね、良いのではないでしょうか。


それにしても、随所に登場するお料理描写が相変わらず素敵です。
「にゃんこ亭」の新刊はいつ出るのでしょうか…!


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文章・描写 :★★★★
展開・結末 :★★★★
キャラクタ :★★★★
独 自 性 :★★★★
読 後 感 :★★★★
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菜の花の一押しキャラ…ヴィンセント・シェイファー

「あなたときたら。いい年をして、公明正大で正しいことならば、
 何をしても何を言ってもよいと思っていらっしゃるのですか?」
               (エイステン・ホーンスリュード)

●「殺戮にいたる病」我孫子 武丸 [読書レポート]

「殺戮にいたる病」我孫子 武丸
ミステリファンは必読、叙述トリックの傑作


殺戮にいたる病 (講談社文庫)

殺戮にいたる病 (講談社文庫)



読了日:2014.1.4
分 類:長編
ページ:324P
価 格:524円
発行日:1992年9月、講談社、1994年8月、講談社ノベルス、1996年11月発行
出版社:講談社文庫
評 定:★★★


●作品データ●
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主人公 : 蒲生 稔、蒲生 雅子、樋口 武雄
語り口 : 3人称
ジャンル: ミステリ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : エロ&グロ
結 末 : 解決
カバーデザイン : 辰巳 四郎
デザイン : 菊地 信義
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【100字紹介】
「真実の愛」を求めた男は、サイコキラーとして
東京の繁華街で次々と若い女性を狙った猟奇殺人事件を引き起こす。
犯人、犯人の家族、そして被害者の知人で定年した元刑事の3人の視点で追う、
事件の先にあるものは…



叙述トリックの最高峰、的な、ミステリ作家のオススメ書評を見て、
いつか読もうと思っていた1冊でした。
そして結論から言えば、間違いない傑作。


東京の繁華街で次々と起こる、若い女性を狙った猟奇的殺人事件。
死んだ女性に「真実の愛」を感じるサイコキラー・蒲生稔の軌跡を辿りつつ、
蒲生稔に加えて蒲生の家族・蒲生雅子、
被害者と親しかった引退した元刑事・樋口という3つの視点から、
時間を追って語られる事件の経過で構成されています。

内容は、エロティック&グロテスクです。
犯人の蒲生稔の行動も、そして考え方も。
「真実の愛」のため、次々と女性をホテルに誘って絞殺、
遺体を愛撫した後に損壊して一部持ち帰る…、
もう、何か色々ダメです。
歴代ミステリの犯人の中でも、トップクラスにどうしようもないキャラです。
まあ殺した時点でもちろん、アウトですが。
自分の息子が犯人なのではないか、と葛藤し、
そして隠蔽を考えている蒲生雅子の方も人としてダメダメです。
でも、その心理の描写が巧みなので、ひどくリアリティはあります。
それがよりグロテスクに感じてしまいます。

そして、特筆すべきラスト。
確かにミステリとしては一流です。
沢山の人が途中、端々で違和感を覚えつつも綺麗に騙され、
世界をひっくり返す最後の台詞に驚愕し、
そしてすとんと納得したことでしょう。
何が凄いって、たぶん多くのミステリファンに、
読み返させることもなく「そうだったのか…」と
納得させてしまうであろうところです。
もちろん、もう1周、読みたくなるのは間違いなさそうですが。

でも描写が苦手かも…。
事件の性質上、仕方ないですね。
しかし、これをもっと別の事件に置き換えられるか?と
ちょっと考えてみたのですが、難しそうです。
こういう事情で、こういう事件だからこそ、こういう作品になった。
そういう必然的なものを感じました。
それに、異常殺人者の描写も秀逸だと思います。
著者自身、ひとりやふたりは殺っちゃってるんじゃないの?くらいに。
蒲生雅子の心理描写については上述していますが、
他のキャラも個々に、様々な思惑を上手く描いています。
完全な善人は見当たらず、皆、生身の人間らしさを持っているのです。

その意味では、ネタバレしたからといって、
この作品の凄さが消えてなくなるということはないでしょう。
まあ、綺麗な巴投げが決まったー!的な最初の一読の気分は
難しいとは思いますけれども。


というわけで、本作は万人にはオススメできませんが、
それでもミステリファンなら、おさえてはおきたいところです。


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文章・描写 :★★★★
展開・結末 :★★★★★
キャラクタ :★★★★★
独 自 性 :★★★★★
読 後 感 :★★
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菜の花の一押しキャラ…特になし

「え?…ああ。そう、そうです」(蒲生 稔)

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